MTXはリウマチ治療のアンカードラッグとして非常に重要な役割を持ちます。
しかし、実際は副作用も多く使用にはたくさんの注意点があります。
MTXの使用はなるべく、というか絶対に経験豊富な医師によるべきであると考えます。
今回はその注意点の中から、リンパ節腫脹についてお話をしたいと思います。
MTX内服している患者さんで、リンパ節が腫れることがあります。
そのほとんどがカゼや虫歯などで一過性・反応性にリンパ節が腫れているだけですが、中には非常に怖いリンパ節腫脹の場合もあります。
それが、「MTX関連リンパ増殖性疾患」(MTX-LPD)です。
MTX-LPDは病理としては悪性リンパ腫に非常によく似ています。
つまり悪性腫瘍、リンパの癌とも言えます。
近年MTX内服患者さんで、一般人と比較し明らかに悪性リンパ腫を発症する割合が高いことが判明しました。
詳細に調べてみた結果、やはりMTXに起因する可能性が高く、MTX内服によって生じるリンパ節腫脹をMTX-LPDと呼称することとなりました。
一般的にカゼや虫歯など感染による一過性のリンパ節腫脹の場合、表面がコリコリ・ツルツル(平滑)であり、よく動き(可動性良好)、触れると痛み(圧痛)があります。
一方で悪性のリンパ節の腫れ方はゴツゴツ・ゴリゴリしていて(表面不整)、痛みもなく、ベッタと張り付いていて動きが悪い(可動性不良)傾向にあります。
良性か悪性かの判断は最終的にはリンパ節生検と言って、実際に腫れているリンパ節を採取して顕微鏡で見る必要があります。
これは非常に侵襲性が高く、「ちょっとやってみようか」という検査ではありません。
ですので、MTX内服患者さんでリンパ節腫脹を見た際には、まずこれが感染など良性の腫脹か?それとも悪性に可能性が高いので新種製の高いリンパ節生検を行うのかをしっかりと判断する必要があります。
MTX-LPDですが、MTXの内服中止によって速やかに改善することもあります。
一方で、悪性リンパ腫と同じように化学療法などが必要となることもあります。
この両者の違いとしてEBウイルス感染が挙げられます。
EBウイルスとは、思春期前後でおこるリンパ節腫脹をともなう一過性のウイルス感染症です。
人によっては感染に気が付かないまま一生を終える方もいらっしゃいます。
このEBウイルスに感染歴がある方は、MTX内服を中止しても改善せず化学療法が必要となることが多い傾向にあります。
一方で、EBウイルス感染の既往が無い方、またEBウイルスとは無関係にMTX-LPDを発症した方はMTX内服中止で改善することが多いようです。
おそらくは、MTX内服によるEBウイルスの再活性化がEBウイルス関連MTX-LPDの発症の原因となると考えられています。
このようにMTX内服している患者さんはリンパ節の腫脹に気をつける必要があります。
もし、リンパ節腫脹を認めたら速やかに主治医の外来に受診するようにして下さい。