リウマトレックスやメトトレキサート、メトレートといったMTX製剤は、リウマチ治療において非常に重要な役割を果たします。MTX単剤でも十分にリウマチを抑える効果がありますが、この後使用する可能性の高い生物製剤と相互的に作用し、効果を良くしたり長持ちさせたりといった、いわゆる「アンカードラッグ」としての役割を担います。しかし用量依存性(MTXの量が増えるほど症状の発現頻度が増えること)が増悪する為、 副作用の発現頻度も少なくはありません。
そこで、今回はMTXの副作用について解説いたします。
軽度な副作用
口内炎や倦怠感、食欲不振や下痢などが挙げられます。内服して1日前後で出ることが多いようです。症状の程度は様々で、我慢が可能なレベルから日常生活に支障をきたす方まで様々です。
中等度の副作用
肝機能障害や血球減少(白血球や赤血球、血小板が減ってしまう)などが挙げられます。こちらも程度は人それぞれですが、特に血球減少は非常に重篤な状態になることもあります。
重篤な血球減少を認めた場合は入院の上、ロイコボリンレスキュー(大量の葉酸を投与し体内のMTXの効果を減弱させる)といった治療が必要になることもあります。軽度~中等度であれば、そのまま経過を見るか、あるいは対症的に治療を加えたりすることもあります。
重篤な副作用
重篤な副作用として感染症、悪性腫瘍などが挙げられます。MTXは免疫を抑制する効果があるので易感染状態になり、容易に感染症に罹患してしまう可能性が高くなります。
また、体の中に潜んでいたB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス、結核菌やカビなどが、MTXを使用することによって大暴れ(再活性化)してしまうこともあるので、使用の前にはしっかりとチェックする必要があります。
また、悪性リンパ腫という悪性腫瘍を発症しやすいとの報告もあります。これを「MTX関連リンパ増殖性疾患」といいます。MTX内服を中止するだけで改善することもありますが、EBウイルスが関与すると悪性リンパ腫に準じて治療をしなくてはならないケースもあります。
副作用を軽減しながら治療を続けるには
MTXはリウマチ治療において非常に重要な薬ですが、副作用によって内服できない方や中断される方は多くいらっしゃいます。そのような場合、「葉酸(フォリアミン)」を使用し副作用を軽減していきます。但し、この葉酸はMTXの効果を減弱してしまう作用もあるので、内服には十分注意が必要です。MTXをしっかりと増量したい、でも副作用が出てしまう方は主治医と相談し、内服を検討すると良いでしょう。
専門医の一言
以上MTXの副作用について解説しました。MTX導入の際には、このようなリスクをしっかりと認識し、事前に検査・準備をしてから導入する必要があります。