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リウマチ治療で使用する生物学的製剤と癌の関係とは?

関節リウマチの治療に生物製剤が使用されるようになって10年以上が経つようになりました。

生物学的製剤は使われ始めた当初、癌の発生頻度が上がるのではないか?

という懸念がありました。

現在の関節リウマチの患者さん向けの生物学的製剤のパンフレットには、悪性腫瘍、つまり癌の発生率が上がるかもしれない!と注意喚起がなされています。

しかし最近になり、日本リウマチ学会が発表したデータや報告によると、癌の発生率はあまり上がらず、むしろ癌の種類によっては発生率が下がるというデータまで出てきました。

今回は日本リウマチ学会が長年にわたり調査をしている、生物学的製剤と癌の発生頻度に関してのデータが出てきたので解説したいと思います。


日本人の関節リウマチ患者において、生物学的製剤の使用は発癌のリスクを上昇させない

日本リウマチ学会が長年にわたって生物学的製剤を使用している関節リウマチ患者と癌の発現、発生頻度に関して

SECURE(Safety of Biologics in Clinical Use in Japanese Patients with Rheumatoid Arthritis in Long-Term)

という研究を行っております。

最終報告はまだ先のようですが、喫煙に関連する癌や一部の皮膚癌に関しては、発生頻度が上昇するものの、大腸癌などの固形癌の発生頻度はむしろ低下することがわかりました。


悪性リンパ腫に関して

ただ悪性リンパ腫に関しては当初でも懸念されていたように、発症のリスクは高まる傾向にあるようです・・・

2015年のリウマチ学会で発表された「生物学的製剤使用は日本人RA患者の発癌リスクを上昇させない」によると、やはり悪性腫瘍「悪性リンパ腫を除く」に関しては100,000人あたりの罹患率を示す年齢標準化罹患率(ASR)を算出したところ一般人口の推定罹患率と比較して上昇は認められませんでした。

一方で悪性リンパ腫に関しては標準化罹患非(SIR)で6.2という結果でした。

標準化罹患比とは標準とする集団に比べて、何倍癌に罹患しているかを示す値です。

これが1より大きい場合は標準集団よりも癌の発生が多く、また1より小さい場合は癌の発生が少ないことを意味します。

つまりほとんどの悪性腫瘍に関しては、生物製剤の使用で発生率に影響を与えないが、悪性腫瘍に関しては残念ながら発生率が上がるというのが結論です。

ただ、悪性リンパ腫に関して、生物製剤の使用によるものなのか?あるいはリウマチの疾患そのものの影響で発生するのかの因果関係に関しては、今後の解析が待たれます。


癌の既往のある患者さんについては?

次に、癌の既往歴のあるリウマチ患者さんに生物製剤を使用した場合に、はたして癌の発生率は高まるのか?についてです。

The incidence of cancer in patients with rheumatoid arthritis and a prior malignancy who receive TNF inhibitors or rituximab: results from the British Society for Rheumatology Biologics Register-Rheumatoid Arthritis.

Rheumatology(2016; 55: 2033-2039)

によると

悪性腫瘍の既往のあるリウマチ患者さんに生物製剤であるTNFα阻害薬(レミケードやエンブレル)またはリツキシマブ(日本ではリウマチ患者さんへの適応はない、でも実はかなり効果があるので保険適応になるのをひそかに期待している)を使用し、その後の悪性腫瘍の発生状況について調べました。

同グループによると同薬剤を使用しても悪性腫瘍の発生率は上昇しないという結果でした。


以上より結論です。

 1.    関節リウマチ患者さんで生物学的製剤を使用しても、ほとんどの癌は発生率が上昇しない

2.    癌の既往があっても、同様に癌の再発率なども上昇させない

3.    しかし、悪性リンパ腫によっては一般の母集団と比較し数倍程度発症リスクを高めてしまう

という結果でした。

リウマチ患者さんのリンパ節の腫脹には細心の注意を払う必要がありますね。


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金子 俊之

金子 俊之

医師 医学博士 専門はリウマチ膠原病。 順天堂大学付属病院リウマチ膠原病内科を経て、現在は墨田区でリウマチ専門診療を行っているクリニックの院長。 現在も週1回大学病院でリウマチの専門外来を担当している。

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