多発性筋炎・皮膚筋炎とは、筋肉の炎症により筋肉に力が入りにくくなる・易疲労感・筋肉痛などの症状を認める疾患です。
そのうち、手指の表面がかさかさとして赤く腫れたり(ゴットロン徴候)、まぶたが赤く腫れたり(ヘリオトロープ疹)といった皮膚症状を認めるものを皮膚筋炎、皮膚症状に乏しいものを多発性筋炎と言います。
この二つを分ける意味としては、筋炎は悪性腫瘍を高頻度に合併しますが、その中でも皮膚筋炎のほうがより高頻度に合併します。
近年急速に患者数が増えており、現在は2万人前後と推測され女性に多い疾患です。
易疲労感、食欲不振、時に発熱・関節痛をきたすこともあります。
レイノー症状もといって、寒いところなどで指先が白や紫色になって腫れるといった症状もかなりの頻度でみられます。
筋肉の症状としては、力が入りにくいといった訴えをする方がほとんどです。
一部筋肉痛を訴える方もいらっしゃいます。
筋症状は胴体に近い部分(近位筋)に表れやすく、腕があげづらい・階段を上るのがつらい・寝た状態から体を起こしづらいなどの症状がもっとも多く認められます。
上記症状に加えて、先ほど説明した皮膚症状(ゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹)を合併した場合、皮膚筋炎を考えます。
医師が患者さんと力比べのようなことを行い、実際に筋力が低下しているかどうかを見ます。
採血で筋肉が壊れると上昇する値(CPK)の上昇が特徴的です。
CPK以外にもGOT・GPTといった肝機能を表す値も上昇するので、筋症状が乏しい間は肝機能障害と誤診されるケースも散見されます。
また、この疾患に特徴的な自己抗体として抗Jo-1抗体がありますが、あまり感度が高くないので認められない症例もたくさんあります。
筋生検とは、実際に筋肉の一部を採取して顕微鏡で見る検査です。非常に感度・特異度が高く有用な検査です。
筋電図は、筋肉に電気を流してその波形から筋炎を診断する検査です。
こちらも非常に有用性が高く診断に役立つ検査です。
治療はステロイドがメインとなります。
多くの場合まずステロイドパルス(大量のステロイドを点滴する)を行った後に50㎎~60㎎(体重あたり1㎎/kg)と非常に多くのステロイドの内服が始まります。
その後ゆっくりステロイドを減量していきますが、再燃を繰り返す場合、あるいは後述する間質性肺炎などの合併がある場合、ステロイドに加えて免疫抑制薬を併用します。
もし悪性腫瘍を合併していることが事前に判明した場合、その悪性腫瘍の治療を先行することにより筋炎は自然軽快することが多いです。
筋炎の合併症で一番注意をしなくてはいけないのが間質性肺炎です。
肺が固くなってしまい膨らみにくくなってしまう疾患です。
特に怖いのが、筋症状が目立たないタイプの筋炎です。
このタイプで間質性肺炎を合併していた場合、急速に間質性肺炎が増悪する危険性があるので注意が必要です。
ほとんどの方はステロイドのみで寛解に至り、日常生活に復帰することができます。
一部の方は免疫抑制薬の併用が必要なことがありますが、それでも筋症状がほとんど無く過ごされる方がほとんどです。
ただ、間質性肺炎を合併しているケースでは、特に筋症状に乏しいタイプの筋炎に合併している間質性肺炎では、急速に増悪し命を落とすこともあります。
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